Unextでいま蟲師を見ています。
『蟲師』は、自然と人間、そして蟲(むし)という神秘的な存在が絡み合う物語です。この作品に登場する一般の人々は、現代人と同じような感情の揺れを見せながらも、死生観や悲劇への向き合い方にはどこか静かな諦念が感じられます。
現代社会では「努力次第で何でも解決できる」というポジティブな価値観が主流です。一方で、『蟲師』の世界には「どうにもならないものはどうにもならない」という受容の精神が根底に流れています。この違いは際立っていますが、それが『蟲師』の魅力でもあります。
たとえば、登場人物が蟲に取り憑かれ、不幸や悲劇に見舞われる場面が多くあります。それでも彼らはその状況を嘆きつつも、無理に抗おうとはしません。ギンコのような蟲師がたまたま介入して助けることもあります。しかし、それはあくまで例外であり、多くの場合、人々は自分なりに運命を受け入れて生きていきます。
『蟲師』は、「どうにもならない中でどう生きるか」という問いを静かに投げかけます。それは解決志向的な価値観とは相反しますが、だからこそ寓意として深く響くのです。この作品は、人間の力の及ばない領域を描くことで、自然への畏敬や人間の弱さ、そしてそれを受け入れる強さを伝えているように思います。
現代人にとって、『蟲師』の世界観はやはり異質です。しかし、「どうにかなる」という楽観ではなく、「どうにもならないものはどうにもならない」という静かな諦観が描かれています。その中でもなお生きていくというメッセージが、静かに心に響きます。